デジタル遺跡をあとにした一行は、山あいの、小さな村にたどりついた。
石づくりの家がならぶ、しずかな村
……のはずが、村の広場が、なにやら、ざわついている
村人A
「だから、開かないんだって!なんどやっても!」
村人B
「こまるよ……
うちは、あした、しはらいがあるのに……!」
広場のまんなかに、りっぱな石の建物があった。
とびらには、大きな金の錠前
人だかりが、そのとびらを、かこんでいる。

みらおあの、どうしたんですか?



ああ、旅の人……。
ここは村の『あずけ蔵』でな
みんな、お金をあずけているんだ。
ところが——村長がとつぜん
亡くなっちまって



そしたら蔵のとびらが、
ひとりでに、がちゃんと閉まっちまったんだよ……
村長の家族のぶんだけじゃない、
葬儀のお金も、引き出せなくて……



え……あずけてる本人が亡くなると
開かなくなっちゃうの?
みー坊は、みんなに聞こえるように、ゆっくりと説明した。



うん……
これはね、『口座凍結』っていうんだ〜
あずけ蔵——つまり銀行はね
あずけている人が亡くなったことを知ると、その人の口座を
いったん、こおらせるんだ
お金の出し入れが、できなくなるよ☀️
村人A
「な、なんでそんな、いじわるを……!」
みー坊
「いじわるじゃ、ないんだよ。
——むしろ、逆。『守るため』なんだ〜☀️」
みらお
「守る……ため?」
みー坊
「うん。亡くなった人のお金は、のこされた家族みんなの『相続財産』になる。
……もし凍結しなかったら、だれかが勝手に引き出して、つかっちゃうかもしれないでしょ
そうなったら、あとで、家族どうしの大ゲンカになる。——だから蔵は
『相続の準備がととのうまで、わたしがあずかっておきます』って、とびらを閉めるんだッ☀️」


村人たちが、顔を見あわせた。
村人A
「そうか……蔵は、村長の家族を、守ってたのか」
みらい
「へ〜そーなんだー……。
こおらせるのって、やさしさだったんだね」
みー坊
「でもね、こまるのは、いま必要なお金……
そう、葬儀の費用なんかだよね☀️
じつは、そのための仕組みも、ちゃんとあるんだ
『仮払い制度』——正式な相続の手続きが終わる前でも
決められた額までなら、葬儀費用などのために引き出せる制度だよ〜☀️」
村人A
「ほ、ほんとかい!?」
みー坊
「うんッ!必要な書類をそろえて
蔵に申し出ればいいんだッ
それから——これが、いちばん大事なんだけど」
みー坊は、村のみんなを、ぐるりと見わたした。
みー坊
「『凍結されてからあわてる』んじゃなくて
『凍結される前に備える』ことも、できるんだよ
元気なうちに、家族とお金の話をしておく。
どの蔵に、なにをあずけているか、書きのこしておく。
……きのう、遺跡で見た『引きつぎのノート』あれがここでも、役に立つんだ〜☀️」
みらお
「つながってるんだ……。伝えることと、お金のそなえも」
村人たちは、さっそく、仮払いの手続きの相談をはじめた。
ざわついていた広場に、すこしずつおちつきがもどっていく。
村長の奥さんが、目じりをぬぐいながら、頭をさげた。
奥さん
「ありがとうございました。……あの人ったら
『おれが元気なうちは大丈夫』って、笑ってばかりで。
お金の話なんて、いちどもしないまま……」
みらいは、チラリとみらおを見やり
「……うちも、そうかも」
みらお
「え。……あ、おれも『まだ大丈夫』って言うタイプだ〜」
みんなが、くすりと笑った。
みらお
「か、帰ったら、ちゃんと話すよ! 蔵のことも、ノートのことも〜!」
夕暮れの村に、あたたかい灯りが、ぽつぽつと、ともりはじめていた。
——お金の「もしも」は、とつぜんやってくる。
そなえは、元気なうちに。


次回:第21話「保険の迷宮」
9/3(木) PM8:00 公開予定!
つぎの町で出会ったのは、書類の山にうもれた未亡人。
「夫の保険が、見つからないんです……」——みうらのカンが、ふたたび光る!



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
1話から読む


前回:第19話「消えゆくデータを救え」


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