沼をぬけて、しばらく歩くと——木々のあいだから、きらきらと光るものが見えた。
みらいわぁ……きれい……
そこには、鏡のようにすんだ、大きな泉が広がっていた
水面が空をうつして、青く、しずかに、かがやいている。



ここは『葬儀の泉』
……ふしぎな泉でね、
ここに来る人は、大切な人の
『見送り』について、思いをめぐらせるんだって
泉のほとりには、ぽつり、ぽつりと、人々のすがたがあった
みんな、しずかに水面をながめている。
そのなかの、身なりのいい老紳士が一みらおたちに気づいて、やわらかくほほえんだ。
老紳士
「旅の方かな。
……わしはね、先日、妻を見送ったのだよ。
それはそれは、大きな葬儀でな。
会社のなかま、ご近所、友人……二百人もの人が、来てくれた」
みらお
「二百人……! すごい」
老紳士
「妻は、人とのつながりを大切にする人だったから、な。たくさんの人に見送られて、
妻らしい、いい式だった。……ただ、正直、準備はたいへんだったし、
あいさつばかりで、ゆっくり別れをおしむ時間は、なかったかもしれん」


すると、少しはなれた場所にいた女性が
ぽつりと言った。
女性
「……うちは、逆でした。家族だけ、七人で見送ったんです」
女性は、泉を見つめたまま、つづけた。
「父の希望で、家族葬にしました。
しずかで、あたたかくて、涙も笑い話も
ぜんぶ家族だけで分けあえた。……でも、あとから
『お別れしたかった』って言ってくれる人が
何人もいて。これでよかったのかなって、いまでも、ときどき」
みらお
「……どっちも、いい見送りなのに。どっちも、少しずつ、迷ってるんだ」
みー坊が、ふたりのあいだに、ふわりと浮かんだ。
「あのね、ふたりとも、葬儀には大きく分けて
『一般葬』と『家族葬』があるんだよ
一般葬は、ご近所や仕事のなかまもきてくれる、昔ながらのお式。
たくさんの人とお別れできるけど、準備や気づかいは、たしかに大変。
家族葬は、家族や親しい人だけで、ゆっくりお別れするお式。
心はこもるけど『知らせてもらえなかった』って、さみしく思う人が出ることもある。
つまりね、どっちにも、いいところと、むずかしいところが、あるんだ〜」





みらら的にはね〜💕
大事なのは『どっちが正解か』じゃなくて
『その人らしいのは、どっちか』だと思うな〜💕
老紳士と女性は、顔を見あわせた。
老紳士
「妻らしい……。ああ、それなら
あれでよかったのだ。妻は、にぎやかなのが好きだったから」
女性
「父は、しずかな人でした。
家族だけの時間を、なにより大切にしてた。
……そうか。父らしかったん、ですよね」
ふたりの顔から、迷いのかげが、すうっと消えていった。



……見送りのかたちって、その人の生き方が、うつるんだね



うん。だからね
いちばんいいのは、元気なうちに
『わたしは、こんなふうに見送ってほしいな』って
家族と話しておくことなんだ。
のこされた人が、迷わなくてすむように☀️



泉が、きらきらしてるみゃ〜
気づけば、夕暮れ。泉はあかね色の空をうつして、いっそう美しくかがやいていた。


老紳士
「旅の方々、今夜はこの近くの宿においでなさい
……そうだ、この泉にはな、ふしぎな言い伝えがあるのだよ」
みらお
「言い伝え?」
老紳士
「ああ、泉のいちばん奥の水面は——のぞきこんだ者の『未来』をうつすのだそうだ」
一行は、思わず顔を見あわせた。
泉の奥は夕やみのなかで、しずかに光っている。
——見送りのかたちに、正解はない。
あるのは「その人らしさ」だけ。
次回:第17話「泉に映る未来」
8/20(木) PM8:00 公開予定!
のぞいた者の未来をうつすという、泉の奥の水面。
みらおたちが、そこに見たものとは——。



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
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前回:第15話「沼から抜け出す方法」


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