王国へつづく道のとちゅうにあった小さな村
一行が立ちよると、村の広場でひとりの女の人が、こまった顔で頭をかかえていた
みらおどうかしましたか?



ああ、旅の方……。
じつは、父がのこしてくれた家のことで、こまっているんです
手続きを、ずっと後まわしにしていたら……
聞けば、女の人は、父親が亡くなったあと、家やお金のことを
「いつかやればいい」と放っておいたのだという。



それは……ちょっと、心配だね。
相続の手続きには、『期限』があるものもあるんだ〜☀️



期限?



うん。たとえば『相続税』
のこされた財産が多いと、税金がかかることがあるんだけど、
それを納めるのは、亡くなったことを知った日から、だいたい十か月以内って決まってるんだよ☀️



十か月……わたし、とっくに過ぎてしまって……



期限をすぎると、よけいな上乗せのお金がかかっちゃうこともあるの〜💕 だから、早めがいちばんなんだよ〜💕



知らないって、こわいね……



それにね、家や土地は名前を書きかえないと、
ちゃんと自分のものにならないんだ。
これを『名義変更』っていうよ。これを放っておくと、あとで売ることも、貸すこともできなくて、こまっちゃうんだッ☀️



そうなんです……
家を直したくても、わたしの名前になっていないから
なにもできなくて…
みらおはしばらく考えて、カバンからあるものを取り出した
それは昨日丘の道で読んだ——あの古い手紙の束だった。


「これ、昨日ひろったんです。会ったこともない人がのこされる家族のために
手続きの順番を書いてくれた手紙で…… よかったら、いっしょに読みませんか」
女の人はおどろいた顔で手紙を受け取った、ひとつずつみんなで読んでいく。
「……あわてないで。あなたはひとりじゃない……」
女の人は手紙の最後の言葉を読んで、ほろりと涙をこぼした
みー坊が優しく語りかける
「過ぎちゃった期限は、しかたないね。でも、
今からでもできることはたくさんあるんだよ〜☀️
専門家に相談すれば、ちゃ〜んと道はあるんだッ☀️」
「ひとりで、かかえこまなくていいんだよ」
みらいはやさしく女の人の背中をさすっている
女の人の顔に、すこしずつ明るさがもどってきた
「ありがとう……。
わたし、もう後まわしにしません。それに…」
女の人は、にっこり笑ってつづけた
「わたしもいつか子どもたちに、こういう手紙をのこそうと思います。
『相続手紙』っていうんですよ、ってね」
みー坊
「うんッ!むずかしい書類じゃなくていいんだ〜
『どこに、なにがあるか』
『だれに、なにをのこしたいか』
そういう気持ちを手紙に書いておくだけで
のこされた人はずっと助かるんだよ〜☀️」
みらおはしみじみと言った
「あの手紙を書いた人がそれをしてくれたから……
こうして知らない人のことまで助けてくれたんだね」
女の人は手紙の束をていねいに胸にだき
「つぎの、こまっている人にもわたします」
と、約束してくれた。


村を出るとき女の人は、ずっと手をふって見送ってくれた
その顔は、もうこまった顔ではなかった。



手紙って……時をこえて、人をつなぐんだね



うん。……のこすことは、未来のだれかへの贈りものなんだね
それは、遺言の塔で手に入れた『整える』の心と、相続の森で知った『託す』の心が
みらおの中で、しずかにつながった言葉だった。
丘をのぼりきると目の前に、にぎやかな大きな王国がぱあっと広がった
色とりどりの旗が、風にゆれている



ついたーッ☀️
つぎは『供養王国』だよ〜ッ!
久々のにぎやかな雰囲気に、一行はわくわくしながら王国の門をくぐった…
のこされた手紙がつないでくれた、あたたかいバトン。
——旅は、つぎの物語へ
次回:第11話「供養王国へようこそ」
にぎやかな供養王国に到着した一行。
しかし、その国の王さまには、ある深い悩みがあった——。


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前回:第 9 話 「古い手紙の謎を解け」


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