みら活ストーリー 第 21 話 「保険の迷宮」

無数の魔物だ

つぎの町に入ると、一軒の家の前で、ため息が聞こえてくる

家のとびらは、あけっぱなし。中をのぞくと——紙、紙、紙……

書類の山が、ろうかまで、あふれ出ていた。

未亡人
「ああ、旅の方……。おはずかしいところを」

家の主は、年配の女性だった。
つかれた顔で、書類の山を、ぼんやりとながめている。

ため息をつく未亡人
未亡人

先月、夫を見送りましてね。
……そのあと、ご近所の方に言われたんです。
『ご主人、保険に入ってなかったの?』って
それが、わからないんですよ。
入っていたような気もするし、書類が、どこにあるのやら……

みらい

それで、おうちじゅうの書類を……

未亡人

ええ。でも、さがせばさがすほど
ぐちゃぐちゃになってしまって……
もう、迷宮ですよ、この家は……

そのとき。書類の山のてっぺんで、なにかが、もぞりと動いた。

ウセモノノフ

……ん〜? なんだっけ〜?
なにをさがしてたんだっけ〜?

ふわふわの、綿ぼこりのような魔物が、書類のあいだを、ふらふらとただよっていた
通ったあとの書類が、ばらばらと、あちこちに散らばっていく。

みー坊

ウセモノノフだ〜!
『どこにしまったか』
『なにが大事か』を、
わすれさせちゃう魔物……!
この家の書類がぐちゃぐちゃなのは
あいつのしわざもあるね

ウセモノノフ

わすれた〜、わすれた〜。
だいじなものほど、わすれた〜

みらお

なんだか、にくめないやつだな……

みー坊
「でも、ほうっておけないよ。
おくさま、大事なことを教えるねッ
保険はね『請求しないと、もらえない』んだ〜☀️」

未亡人
「え……。自動では、もらえないんですか?」

みー坊
「うん。保険の会社は、だれかが亡くなったことを、自分からは知らないんだッ
だから、のこされた人が『請求』して
はじめて保険金がしはらわれるんだ

そして請求には、期限もある。ずっとほうっておくと
時効で、もらえなくなることもあるんだよ〜」

未亡人
「そんな……。じゃあ、はやく証券を見つけないと……!」

みうら
「……まかせるみゃッ🐾」

みうらが、すん、すん、と鼻を鳴らして書類の迷宮へふみこんだ。

「こっちは、ちがうみゃ。
……こっちも、ちがう……
 みゃ!このタンスにおうみゃ〜🐾」

みうらは、古いタンスの、いちばん下のひきだしの、そのおくを、かりかりとひっかいた
ひきだしを外してみると——おくに、小さな木箱が、ひっそりと、かくれていた。

見つけたみゃッ!

木箱の中には、保険証券が、きちんとたたまれて入っていた。それも、二枚。

未亡人

あっ……それ、夫の……!
二つも、入っていたなんて……。
あの人、なにも言わないから……

みー坊

見つかって、よかった!
あとはこの証券をもって、保険の会社に連絡すれば
手続きの案内をしてもらえて
必要な書類も教えてくれるよッ☀️

みらら

それとね〜💕
もし証券がぜんぜん見つからなくても
あきらめなくていいんだよ
『契約があったかどうか、まとめて調べてもらえる仕組み』もあるの
ひとりでかかえこまないで、まず相談よ〜💕

ウセモノノフが、しょんぼりと、書類の山からおりてきた。

ウセモノノフ

みつかっちゃった〜。
……わすれられたものが、あんまりかわいそうで
いっしょにいただけなのに〜

みらお

……そっか
おまえ、わすれられたものの、そばにいたかったのか

みらい

じゃあ、もう、この家にいる理由はないね。
この家の大事なものは、ちゃんと、思い出してもらえたから
ねッ🌟

みらいが、やさしく杖をふると、あたたかい光がウセモノノフをつつんだ。
魔物は「わすれないでね〜」と、ふわふわ、まどから飛んでいった。

未亡人は、二枚の証券を、むねにだきしめた
「ありがとうございました。
……これからは、わたしも、むすめに伝えておきます。
どこに、なにがあるか。……わすれられて、かなしい思いをするものが、出ないように」

涙ぐむ未亡人

町を出るころ、みらおが、ぽつりと言った。

みらお

保険って、入って終わりじゃ、ないんだね。『入ってるよ』って伝えて、はじめて、完成するんだな〜!

みー坊

うん!
それも、りっぱな『伝える』だねッ☀️

羅針盤の四本目の針が、それにこたえるように、きらりと光った。

——たいせつな備えも伝わらなければ、ないのと同じ。見つけてもらってはじめて力になる。


次回:第22話「遺品整理の嵐」
9/7(月) PM8:00 公開予定!

つぎの村は、あふれる遺品の山に、うもれていた。
「なにを残して、なにを手放すか」——心の整理の物語。

みーちゃん

かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾

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