遺跡の中心には、ひときわ大きな、光の神殿がそびえていた
——『記憶の保管庫』
けれどその光は、いまにも消えそうに、ちかちかと明滅していた
みー坊まずい……
保管庫の力が、もうほとんど残ってない。
ここが消えたら、遺跡じゅうの石碑が
ぜんぶ消えちゃう



どうすれば、たすけられるの!?



保管庫の『鍵』をさがそーッ!
古の民は、かならずどこかに鍵を残しているはずだよ
そのときだった。らっぱのような声が、神殿にひびきわたった。



キイタカー!
保管庫ノ鍵ハ
呪ワレテイルゾー!
サワッタラ、石ニナルゾー!



ま、まだ言ってる……!
うわさをまきちらす魔物、デマナガシ
その声を聞くだけで、あしがすくんで、動けなくなりそうになる。
みらお
「みんな、まどわされないで!
……みー坊、たしかなことだけ、教えて」
みー坊
「うん。——僕が調べたかぎり、『呪い』の記録なんて、どこにもない。
あるのは『鍵は、伝える心とともにある』っていう、古い言葉だけ」
みうら
「……みゃみゃ? なんか、におうみゃ」
みうらが、鼻をひくひくさせて、神殿のすみへ、とことこ歩いていく
そして、かべの一部を、かりかりとひっかいた…



ここ、あやしいみゃ〜
かべの石をそっと外すと——中から、一冊の小さな手帳があらわれた。
表紙には、こう書かれていた
『わたしの たいせつを、あなたへ』


みらい
「これ……日記?」
みー坊
「……ちがう。これは『引きつぎのノート』
古の民の知恵だよ……どこに、なにがあるか。
なんの契約をしているか。
たいせつな写真はどこにしまってあるか。
そして、だれに、なにを伝えたいか。
……ぜんぶ、ここに書いてあるはず」
ページをめくると、ていねいな文字が、ならんでいた。
『光の口座は、東の石碑に。合言葉は、家族の記念日』
『契約している光の便りは三つ。わたしが旅立ったら、とめてください』
『まごへ、あなたの絵が、わたしの宝物でした』
みらお
「……ぜんぶ、書いてある。のこされた人が
こまらないように……まよわないように」
みー坊
「これが『鍵』なんだ〜
保管庫は、力をなくしたんじゃなくて
『引きつぐ人』を、ずっと待ってたんだね〜☀️」
みらおが、ノートを保管庫の祭壇に、そっとかざした。
その瞬間——神殿ぜんたいが、あたたかい金色の光に、つつまれた
消えかけていた石碑たちが、つぎつぎと、あかるさをとりもどしていく
写真が、言葉が、思い出が、いきいきと、かがやきはじめる。



ナ、ナンダー!?
ウワサトチガウー!?



あなたのうわさが
ぜんぶ、でたらめだったのよ
……もう、この遺跡で、かってなことは言わせない
オコーーッ!
魔法の光が、デマナガシを、ぽかりとつつんだ
らっぱの口が、きゅうっと小さくすぼんで——
デマナガシ
「……コンドカラ、タシカメテカラ、シャベリマス……」
しゅん、と小さくなって、魔物は遺跡のかなたへ、飛びさっていった。
光をとりもどした神殿の、その中央で——ひときわ強くかがやくものがあった
みずいろに光る、一本の『針』
みらおが羅針盤をとりだすと、針はすうっとうかびあがり、左下の溝に、しずかにおさまった。
カチッ


みー坊
「四本目の針——『伝える』の針だ〜☀️
かくしたのは、千年前の『伝えるの賢者』さま。
……きっとこの遺跡の民に
『伝えることのたいせつさ』をたくしたんだね」
みらおは光る石碑たちを見わたして
「伝えなければ、のこらない。
……でも、伝えれば、こんなふうに、ずっとかがやくんだね」
みらい
「ねえ、みらお、うちにも作らない?
この『引きつぎのノート』……
わたしたちの、たいせつを、書いておくの」
みらお
「……うん。帰ったら、いっしょに書こう」
羅針盤の中で、四本の針が、ならんで光っていた。のこる針は……あと、一本。
——伝えることは、のこすこと。
光の遺跡が、それを教えてくれた。


次回:第20話「突然の口座凍結!」
8/31(月) PM8:00 公開予定!
山あいの村で、一行が出会ったのは「あかずの金庫」に困りはてた人々。
お金があるのに、引き出せない——
その意外なわけとは……



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
1話から読む


前回:第18話「デジタル遺跡に踏み込む」


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