泉をあとにして、数日
景色は、すこしずつ、ふしぎなものに変わっていった。
石だたみの道のわきに四角い石碑が、ぽつり、ぽつりと立っている。
石碑は、うっすらと青白い光をはなち、その表面には、
文字や、絵や、だれかの笑顔が、うかんでは消えていた。
みらいなに、ここ…… 石が、光ってる……?



ここは『デジタル遺跡』
——むかしの人たちが残した
『デジタル遺産』が、ねむっている場所なんだ



でじた類さん??
あの有名な酒場放浪……



みらお、シーしなさいッ💕



うん。
紙に書いて残すものじゃなくて
光の中に残された財産のことだよ。
思い出の写真
だれかに送った手紙、日記、お金の記録……
この石碑、ぜんぶ、だれかの
『人生のかけら』なんだ〜☀️
よく見ると、石碑のひとつに、家族の笑顔の絵がうかんでいた
でも、その絵は、砂がくずれるように、はしからすこしずつ、消えかけている。





あっ……
この写真、消えちゃう……!



……だれにも
引きつがれなかったんだね。
持ち主がいなくなって、そのままになったデジタル遺産は
こうやって、いつか消えてしまうんだよ
パスワードがわからなくて、家族もあけられなかったのかも



……みゃんだか、さみしい場所だみゃ〜
そのとき、遺跡のおくから、けたたましい声がひびいてきた。
「タイヘンダー! タイヘンダー!
アノ石碑ノ中ニハ、キンカガ百万枚!
ミンナ、ホリオコセー!」
あらわれたのは、らっぱのような口をもつ、ばたばたと飛びまわる魔物だった!



デマナガシだ!
たしかめてもいないうわさを
大声でまきちらす魔物……!


デマナガシの声につられて、旅人たちが、われさきにと石碑をほりおこそうとしていた。
旅人
「金貨だ! 金貨があるんだろ〜!?」
みー坊
「まってーッ!
その石碑は、ほったら、こわれちゃう!
中身はお金じゃない、だれかの思い出……」
! がしゃん。
とめる間もなく、石碑がひとつたおされて、割れた……中からうかびあがったのは、
金貨ではなく——おばあさんが、まごに宛てて残した、ひとことの言葉だった。
『おたんじょうび、おめでとう。ずっと、みまもっているよ』
その言葉は、ほたるのように、ふわりとまいあがり
だれにも届かないまま、夜空に消えていった……


旅人たちが、しんと、しずまりかえる。
旅人
「おれたち……なんてことを……」
みらおはぐっと、こぶしを握っている
「……うわさだけで、動いちゃ、だめなんだ」
みー坊
「デジタル遺産にはね、
お金にかかわるものもあるんだ
ネット上の口座、電子のお金、株や仮想通貨……
でも、それと同じくらい、写真や言葉みたいな
『心の財産』もあるんだ
どっちも、ちゃんと引きついであげないと……いま見たみたいに、消えちゃう……」
みらい
「引きついで、あげたいね……。のこりの石碑、まもれないのかな」
みー坊は、遺跡のおくを、じっと見つめた。
みー坊
「……この遺跡の中心に、『記憶の保管庫』があるはずなんだ
そこが、この石碑ぜんぶの、おおもと。でも——」
遺跡中心の方角の空が、ちかちかと、あやうく明滅していた。



保管庫そのものが、消えかけてる
……いそごう。まにあううちに!
一行は、光の石碑のあいだをかけぬけて、遺跡の中心へと走りだした。
——だれにも引きつがれなかった思い出が、音もなく消えていく。
それを、ただの「データ」と呼んでいいのだろうか……
次回:第19話「消えゆくデータを救え」
8/27(木) PM8:00 公開予定!
消えかけた記憶の保管庫
そこでみらおたちが見つけた、古の民の知恵とは?そして羅針盤の四本目の針「伝える」が——



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
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前回:第17話「泉に映る未来」


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