祈りの丘をこえると、みどりの深い森と、そのむこうに光る海が見えてきた。
森の入り口には、小さな木の門があり
かかげられた札には、こう書かれている
——『樹木葬の森』
みらいじゅもくそう……? お墓じゃ、なくて?
森の中は、しずかで、明るかった。
木もれ日のなか、若い木、大きな木が、のびのびと立っている。
その木々の根もとに、小さな名前の札が、そっと、そえられていた。



……この木
ぜんぶ……だれかの……?
森の番人
「そうだよ。
ここでは、墓石のかわりに、木を植えるんだ」
あらわれたのは、森の番人のおばあさんだった。
手に、じょうろを持っている。


番人
「この森の木は、みんな、だれかの『帰った場所』
ほら、この大きなカシの木。
これはわたしの母さんだよ。
……春には芽ぶいて、夏には木かげをつくって、鳥がうたって。
母さんは、いまも、にぎやかなことが大すきさ」
みらら
「お墓が、生きてる森になるんだ…すてき〜💕」
番人
「海のほうじゃ『海洋散骨』をえらぶ人もいるよ
お骨をこまかくして、船で沖に出て、海へかえす。
……船乗りだった人、海が大すきだった人がね」
みらい
「自然に、還る……。
でも、いいのかな。その、勝手にやっても……」
みー坊
「いいところに気づいたね、みらいちゃんッ
じつはそこが、いちばん大事な知恵なんだ〜☀️」
みー坊は、みんなに向きなおった。
「自然葬はね、
『どこでも自由にやっていい』わけじゃないんだ。
樹木葬は、ちゃんとゆるされた墓地でおこなうこと
散骨も、お骨をそのままではなく、こまかくすること
人の家や畑の近く、水源のそばはさけること
土地によっては、決まりがある場所もある。
——自然への敬意と、まわりの人への配慮。
それが、自然に還るための作法なんだ☀️」


みらい
「へ〜そーなんだー
自由にみえて、ちゃんと作法があるんだねッ🌟」
番人
「そのとおり。
……それとね、旅の人たち。
もうひとつだけ、伝えておきたいことがある」
番人は、じょうろの水を、若い木にそそぎながら、言った。
「自然に還るをえらぶ人はね、ときどき、家族に反対されるんだ。
『お墓がないと、会いにいく場所がなくなる』って。
……その気持ちも、ほんとうなんだよ。
のこされる人には、『手を合わせる場所』が必要なこともある」
みらお
「……どうしたら、いいんですか?」
番人
「話しあうのさ。生きてるうちに、なんども。
『わたしは森に還りたい。でも、あなたが会いたくなったら、この森においで』って。
——還りかたを決めるのは本人。でも、見送りかたには、のこる人の心もある。
両方をだいじにするから、いいお別れになるんだよ」
みらいが、そっと、みらおの手をにぎった。



……うちも
いつか、ちゃんと話そうね
どこに還りたいか、ってさ🌟



うん。
……おれ、ちょっとだけ、わかった気がする。
お墓とか、森とか、海とか……
かたちはちがっても、
ぜんぶ『またここで会おうね』っていう、約束の場所なんだね!
森をぬけると、夕日が海を金色に染めていた。
沖のほうで、一そうの白い船が、花びらを、そっと海にまいているのが見えた。
だれかが、海に還(かえ)っていく。見送る人たちの、しずかな祈りとともに。
——大地に還っても、海に還っても、思い出は消えない。会いたくなったら、森へ、海へ。
そこが約束の場所になる。


次回:第31話「デジタルで繋がる供養」
10/8(木) PM8:00 公開予定!
「遠くに住む家族は、お参りにいけない」——その悩みに、光の技術がこたえる。
あたらしい供養のかたちとは。



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
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前回:第 29 話 「祈りの形は自由だ」


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