島から本土へもどった一行は、ゆるやかな丘のつらなる土地へ入った
丘のうえの町は、ふしぎな町だった
とんがり屋根の祈りの堂、鐘の塔、石をつんだだけの祈りの場、花で飾られた広場——
いろんなかたちの祈りの場所が、なかよく、ならんで建っている。
みらいいろんな祈りかたが、ぜんぶ
いっしょにあるんだね



ここは『祈りの丘』
この町ではね、『どう祈るか』は
ひとりひとりの自由なんだ〜☀️
広場のすみで、ひとりの女の人が、うつむいて座っていた。手には、一枚の式のあんない状。
女の人
「……わたし、まちがって、しまったのかしら」


話を聞くと、女の人は先日、母親を見送ったばかりだった。
女の人
「母は、堅苦しいことがきらいな人で。
『わたしのお別れ会は、お経も祭壇もいらない。
みんなで好きな音楽をかけて、笑ってすごして』
って、生前から言ってたんです。 だから、そのとおりの式にしました。
母の好きだった歌をうたって、思い出を語り合って……いい式だったんです。でも——」
女の人
「あとから親戚に、言われました。
『あんなのお葬式じゃない』
『ちゃんとした形でやらないなんて、故人がかわいそうだ』って……」
みらお
「そんな……。お母さんの望みどおりに、したのに」
みー坊
「ねえ、聞いて。いま、この人がやったお式はね
『無宗教葬』とか『自由葬』って呼ばれるものなんだ。
宗教の決まったやり方にそわないで、自由なかたちでお見送りする式のこと」
みー坊
「音楽をながす。思い出の写真をかざる。
手紙を読む。みんなで語り合う——ぜんぶ自由。
『その人らしいお別れ』を、いちから作れるんだ。
えらぶ人は、少しずつふえてるんだよ☀️」
みらら
「みららステキだと思うな〜💕
お母さんの『こうしてほしい』を、ちゃんと叶えたんだもん💕」
女の人
「でも……『ちゃんとしてない』って……」
そのとき、うしろから、しずかな声がした。
「——ちゃんとした祈り、とは、なにかね」
ふりかえると、祈りの堂の前に、この町の司祭さまが立っていた。
おだやかな目の、老いた聖職者だった。
司祭
「わたしは、神につかえる身だ。祈りの作法を、だれよりも重んじる。
……だがな、長く生きて、わかったことがある。
作法は『心をこめる』ための器にすぎん。
器のかたちがちがっても、こめられた心の尊さは、なにひとつ変わらんのだよ」
司祭
「お母上の望んだかたちで、笑って見送った。語り合い、歌った。
……それを『祈りではない』と言える者が、どこにおるかね。
この丘の町では、とんがり屋根の祈りも、石つみの祈りも、歌の祈りも——みな、となりどうしだ」
女の人の目から、ほろりと、涙がこぼれた。
女の人
「……よかった。母を、母らしく、見送れてたんですね」


みー坊
「うん。あ、でもひとつだけ、これから自由葬を考える人に、大事な知恵をつたえるね。
——もし、先祖代々のお墓がお寺にあるなら
事前にお寺へ相談しておくこと。
宗教のお式をしないことで、納骨のときにこまる場合があるんだ。
自由をえらぶためにも、まわりへのひとことが、大切なんだよ〜☀️」
みらい
「へ〜そーなんだー
自由って、じゅんびがあってこそ、なんだね」
夕方の丘に、鐘の音がひびいた。
とんがり屋根の鐘だ
それにこたえるように、広場のほうから、だれかのうたう歌がきこえてくる
ちがうかたちの祈りが、おなじ空に、とけあっていく。
みらお
「……いい町だね、ここ」
——祈りのかたちは、自由でいい。
心がこもっているなら、それはぜんぶ、ほんものの祈りだから。


次回:第30話「大地に還る」
10/5(月) PM8:00 公開予定!
丘のむこうに広がる、みどりの森と青い海。
「お墓ではなく、自然に還りたい」——その願いのかたちとは



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
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前回:第 28 話 「島の最果てで」


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