みら活ストーリー 第 6 話 「整えることが、すべての始まり」

背後に魔物が…

みらおが割れた石板をカバンにしまった、その時だった。塔が、ぐらりと大きくゆれた。

天井のほうから、重たい影が、ずるり……とおりてくる。
それは、まるまると太った、なまけものみたいな魔物だった。

大きなあくびをしながら、とろんとした目で一行を見下ろしている。

みー坊

みんな気をつけてッ!
こいつが、この塔の主——
アトデイインだ〜ッ!

みらい

あとで……いいん?

みー坊

『そんなの、あとでいいじゃ〜ん』『いま、やらなくていいよ〜』って、なんでも先のばしにさせる魔物だよッ。
遺言を書かないまま、たくさんの人を後悔させてきた、いちばんの親玉なんだッ!

アトデイイン

ふぁ〜あ……ゆいごんなんて、まだまだ先でいいじゃ〜ん……どうせ、いつか、そのうち……ねぇ?

その、とろけるような声を聞いていると、みらおの体から、すうっと力がぬけていき
その場に座り込んでしまった
「……たしかに。べつに、今すぐじゃなくても…
 …あとで、ゆっくりで……」

「みらおッ!?しっかりして!」
みらいが呼びかけてもみらおは面倒くさそうにしている

アトデイインは攻撃の手をゆるめない
「そうそう……すわって、休も〜よ……ぜんぶ
あとまわしで、アトデイインダカラ〜……」

みー坊は少したじろいだ
「これがアトデイインの力なんだッ💦
『あとで』『そのうち』で、
心をなまけさせちゃうんだ〜ッ……!」

みらおのまぶたが、とろんと重くなる。いまにも眠ってしまいそうだ——。

そのときカバンの中で、割れた石板がことり、と小さな音を立てた。

その音といっしょに、みらおの頭の中に
さっき塔の壁で読んだ、賢者の言葉がよみがえる…

——知恵を五つに分かちて、世界へ散らせり。

みらおはゆっくりと目を開けて
「……『あとで』っていうのは……
『やらない』のと、おなじなんだ…
千年も前の賢者が、未来のおれたちのために
ちゃんと知恵をのこしてくれた
『あとで』なんて言わずに……
なら、おれだって、今、やらなきゃ」

みらおが、強烈な眠気をぐっとこらえ立ち上がる
とろんとしていた目に、光がもどってきた

アトデイイン

えっ……なんで、立てるの……
みんな、あとまわしに、するのに……
アトデイインダカラ〜

みー坊は目を輝かせて叫んだ
「みらおが、目をさましたんだーッ!
今だよ、みらいちゃんッ☀️」

みらい

大事なことを、ずるずる後回しにさせて……
たくさんの人を泣かせてきたのはアンタね……ゆるさない
オコーーーッ!

みらいの杖から、ぴしゃりと光が走った。ねむ気をふきとばす、目のさめるような光

みー坊

ぼくらも、いくよーッ☀️

みらら

みらら、ぜんりょくチャージ〜💕

3人の力がひとつの大きな光になって、アトデイインをやさしく包みこんだ。

アトデイイン

やめて〜あ〜……いま、やる、って……
こんなに、きもちいいんだ……
ふぁ……ありがと〜
……アトデハヨクナインダ〜…

こうしてなまけものの魔物は、どこかほっとしたような顔で、すうっと消えていき
塔をつつんでいた重たい空気が、いっぺんに晴れていく

——その時、石板が置かれていた台座のもうひとつ奥。かくし扉がことり、と開いた
中にはほそく光る一本の『針』が静かに置かれている

みらおが羅針盤を取り出すと、針はひとりでに浮かびあがり、すうっと中心におさまった

カチッ

羅針盤に、はじめての針がはまる音がした。

みー坊がはしゃぎながら言った
「やった〜ッ! 羅針盤の
 最初の針——『整える』の針だ〜ッ☀️」

みらおは不思議そうに「整える……?」

みー坊

うん。自分の気持ちや、のこすものを
ちゃんと『整える』こと
遺言はその第一歩なんだ〜ッ☀️

この針を隠したのは、千年前の
『整えるの賢者』さまなんだね……

みらいちゃんが、さっき胸がきゅっとしたのも
もしかしたら、なにか関係あるのかもね?

みらいは自分の胸に、そっと手をあててみた、なぜかなつかしいような気持ちがする

みらい

わたしが……?

みー坊は、にっこり笑って、それ以上は言わなかった。

みらら

ねぇねぇ、遺言ってね、家族じゃない人にも
のこしたものをあげられるんだよ〜💕
それを『遺贈』っていうんだよね〜💕

みー坊

そうだよ〜お世話になった人や
応援したい場所にも、気持ちをのこせるんだッ☀️
だれかを思う気持ちを『整える』のが、遺言なんだよ〜

みらお

整えるって……未来への、贈りものなんだね

塔を出ると、村に明るさがもどっていて
さっきまで下を向いていた人たちが、顔を上げて笑っている。

村人
「勇者さま、ありがとう。
わたしも、大切な人に手紙を書くよ。
……『あとで』じゃなく、今日、ね」

あたたかい見送りを受けて、みらお達は、また歩きだした
羅針盤の中で、最初の針が、きらりと光っている。

——5本の針の、はじめの一本。長い旅は、まだ始まったばかりだ。


次回:第7話「霧の中の相続の森」

つぎに一行がたどり着いたのは、深い霧につつまれた森
そこでは、旅人たちが道に迷い、争っていた——。

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