
不穏な気配は、お城の地下から立ちのぼっていた
みらお達と供養王は、灯りを手に暗い階段をおりていく
地下の広間にたどりつくと——そこには
こおりついたように青白いブルブルとふるえる魔物がうずくまっていた。
みー坊ッ!……あれは……ブル助!
『変わるのがこわい』
『先のことを考えるとこわい』っていう気持ちにつけこんで
人の心をこおらせちゃう魔物なんだ……


ブル助がブルブル震えながら、小さな声で呪文を唱えた
「カワル……コワイ……
ムカシノママ……トマッテイタイ……」
その声を聞いたとたん、供養王の顔が、さらに青ざめた!
供養王
「ああ……そうだ、そのとおりだ。
むかしのやり方が消えてしまう……わしにはそれがたえられぬ……」
王の恐れに反応して、ブル助がぶわりと冷たい霧をはき出す
「ブルブル……コワイ……」
広間の灯りが、つぎつぎと凍りついていく。
みらいが心配そうに
「王さま、しっかり……!」
みらおは、こおりつく広間の中で、じっと立ちつくしている
王の言葉が、自分の胸にもふかくつきささっていたのだ。
みらおは、ぼそっと言った
「……こわい、ですよね。変わっていくのが
おれも……こわいです」
供養王
「なんじも……?」
「はい。おれ、ずっとこわいんです……
自分が変わることも、なにかを失うことも……でも」
みらおは、こおった灯りにそっと手をふれて
「かたちが変わっても
消えないものが、あるんじゃないかって
……王さま、この国の人たちは、なぜ、あんなに笑っていたんでしょう……」
みー坊が、しずかにつづける
「供養のかたちはたしかに変わってきたよね〜
今はね、お墓だけじゃないんだッ
遺骨を小さな入れものに入れて
いつもそばに置く『手元供養』
お寺が
ずっとかわりに供養してくれる『永代供養』
海や山に、遺骨をかえす『散骨』——
いろんなかたちがあるんだ〜☀️」
みらら
「でもね、みららも思うの💕 かたちがどれだけ変わっても
『大切な人を想う気持ち』は、ぜんぜん変わってないんだよ〜💕」
みー坊
「そう。手元供養も、永代供養も、散骨も……
ぜんぶ、『つなぎたい』っていう心から生まれたんだ〜
かたちは、その時代の人が
いちばん心をこめられるように、変わっていくだけなんだよッ☀️」
供養王の目が、大きく見ひらかれた
「かたちが変わるのは……
心を、なくすことではない、むしろ……
心を、のこそうとして、いるのか」
その瞬間、供養王の胸から、あたたかい光がぽうっと灯った
凍りついていた広間の灯りが、ひとつ、またひとつと、あたたかくともりはじめる。
ブル助
「アタタカイ……イヤ、ブルブル……トケルヨ……コワイヨ〜……」
みらいの目に溜まっていた涙がいまにもあふれそうだった
「もう……だいじょうぶよ……これ以上
この王さまの心を凍らせないでね……オコッ!」



あたたかいのも……こわくない?……はじ……て……しった……ありが……
みらいの杖から放たれた、あたたかい光が、ブル助を優しくつつむ
青白い魔物は、ほっとしたように、ゆっくりと目をとじて消えていった……


広間じゅうの灯りが、いっせいにともった。氷はとけ、あたたかい光が地下いっぱいに満ちる。



……ありがとう。
わしはまちがっていた
かたちを守ることばかり考えて、いちばん大切な『心』を信じていなかった……
なんじのおかげだ
勇者みらおよ、『こわい』と正直に言える、その強さに救われた
その言葉にみらおは、すこしはにかんだ
こわい、と言うことは弱さじゃない……そう思えたのははじめてだった
そのとき、玉座の後ろの壁がしずかに光りだした
あらわれたのは、ピンク色に光る一本の『針』
みらおが羅針盤を取り出すと、針はすうっと引き寄せられ自ら溝におさまった
カチッ……





やっほ〜ッ☀️ 三本目の針
『つなぐ』の針だーッ☀️
これを隠したのは、千年前の
『つなぐの賢者』さまだよね〜☀️



つなぐ……。かたちが変わっても、心はつながっていく……
そういうことなんですね
みらおは羅針盤を見つめながら、賢者への感謝と、偉大さを感じていた
供養王は、城の窓をあけはなった
花と灯りにあふれる王国が、いつも以上にあたたかくかがやいて見えた。



わ〜、きれい……
この国、やっぱりすてきだね


一行は、王国の人々に、あたたかく見送られて、つぎの旅路へと歩きだした
——変わることはこわくない、つなぐ心があるかぎり。
三本目の針が、羅針盤の中で、やさしく光っていた。
次回:第13話「みらお、死す!?」
8/6 PM8:00 公開予定!
供養王国をあとにした一行を、まさかの悲劇がおそう。
——勇者みらお、まさかの……死!?



見るべしッ!
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前回:第 11 話 「供養王国へようこそ」


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