村長の家は、村を見わたす小さな丘の上にあった。
むかえてくれたのは、しゃんと背すじののびた、白髪のおばあさん
——この人が、終活村の村長だった。
村長よく来たね、旅の人たち。
……おや。あんた、おもしろいものを持ってるじゃないか
村長の目は、みらおのこしの羅針盤に、まっすぐ向いていた。
「え……これ、わかるんですか?」
村長
「ふふ。見せてごらん」
羅針盤をひらくと、四本の針が、それぞれの色で、やわらかく光った。
村長は、目をほそめて、ひとつひとつ、ゆびさした。


村長
「整える。託す。つなぐ。伝える。
——この村の教えと、まったくおなじだ」
一行
「「えっ!?」」
村長
「おどろくことぁないさ。
昔からこの村につたわる、たった五つの、くらしの知恵だよ。
……あんたたちが集めているのは、めずらしい宝物なんかじゃないんだよ
だれの毎日の中にもある、あたりまえの知恵なのさ」
みー坊
「毎日の中にも、ある……」
村長は、お茶をひとくち、ゆっくりのんで、つづけた。
「昨日、うちの村の終活を見ただろう。
あれはな、『死ぬ準備』じゃない。
よく誤解されるがね。
……あれは『今を、豊かにする活動』なんだ」
村長
「身のまわりを整える。
大事なものをだれかに託す。
人とつながる。想いを伝える。
そして——それを、つづける。
そうやって毎日をすごすと、な
人生の『これから』が明るくなるんだよ」
みらい
「これから、が……」
村長
「そう。だからわしらは、終活という言葉を、こう呼びかえておる。
——『みら活』。未来のための活動、とね」


みらお
「みら活……」
はじめて聞くはずの、その言葉。
なのに、なぜだろう。
旅で見てきたすべてが、その一言に、すうっとおさまった気がした。
遺言の塔で学んだ「整える」
相続の森の「託す」
供養王国の「つなぐ」
デジタル遺跡の「伝える」
——ぜんぶ、未来のための活動だったのだ。
みらお
「おれたちの旅……ぜんぶ『みら活』だったんだ」
村長
「はっはっは
いい顔になったじゃないか、勇者どの。ん?
……ああ、それとな。五本目の針、『続ける』あれがいちばん、むずかしいよ」
みー坊
「どうして〜?」
村長
「整えるのも、伝えるのも、一度ならだれでもできる。
だがな——未来ってのは、一度きりじゃ、つくれんのだ。
ちょっとずつ、なんども、くりかえす。あきらめずに、つづける。
……それができた者だけが、ほんとうの意味で、未来をつくれる」
みー坊は、その言葉をじっと、かみしめるように聞いていた。
そしてポツリともらした
「……つづける。僕にも、できるかな。ずっと、ずっと、先まで」
みらお
「できるよ〜。だって、ずっと一緒にいるんだから」


村長は、そんなふたりを見て、目をほそめた。
村長
「……いいコンビだ。あんたたちなら、
五本目の針にも、たどりつけるだろう。
——その前に、となりの村にもよっていくといい、おもしろいよ〜。
あそこの終活は、うんと若いんだ」
みらら
「若い、終活〜?💕」
丘をくだる一行のうしろで、村長は、いつまでも手をふっていた。
——みら活はおわりのためじゃなく、未来のための活動。旅の意味が、ひとつにつながった。
次回:第25話「Z世代の終活村」
9/17(木) PM8:00 公開予定!
となりの村は、若者だらけ!?
「終活は老後にやるもの」の常識をくつがえす、新しい世代のみら活とは——。



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
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前回:第23話「終活村のおじいさん」


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