広場のすみ
みらおは、浮かない顔の青年のとなりに、そっと腰をおろした。
「……となり、いい?」
青年は、こくりとうなずいた。手の中の書きかけのカードを、ぎゅっとにぎって。
レン
「……旅の人も、わらいます?
若いくせに『もしもリスト』なんて書いてるの、へんだって」
みらお
「わらわないよ。
……どうして、書こうと思ったの?」
レンは、ぽつり、ぽつりと、話しはじめた。
「去年……しんゆうが、事故で入院したんです。
命はたすかった。でも、しばらく、意識がなくて。
——家族の人たち、なにもわからなくて、
ほんとうに困ってた、あいつがなにを望むのか、
だれに知らせてほしいのか、なにひとつ……
そのとき思ったんです。
もしもって、年齢の順番どおりに来ないんだ、って
……だから、書いたんです。
家族を困らせないように。なのに……
父さんに見つかって
『縁起でもない!若いやつが死ぬ話なんかするな!』って……。
ぼくは、家族のために書いたのに」
みらおは、しばらくだまって、それから、ゆっくり口をひらいた。
みらお
「……お父さんはさ、たぶん、『死ぬ話』に見えたんだよ。
きみが『生きるため』に書いてるって、まだ知らないだけで」
レン
「生きる、ため……?」
みー坊
「うん。
——ねえ、レン君『任意後見』って、知ってる?」

みー坊が、ふわりと、ふたりのあいだに浮かんだ。
みー坊
「元気なうちに
『もしもわたしが決められなくなったら、この人にお願いします』って、
信頼できる人を決めておける制度なんだ。
お金の管理とか、大事な手続きとか
——これね、『死んだあと』の話じゃないんだよ。
『生きているあいだ』の話なんだ」
レン
「生きている、あいだの……」
みー坊
「そう。きみのしんゆうに必要だったのも
まさにそれだよね。もしもリストも
任意後見も、遺言も——
ぜんぶ、『自分がなにを大事にしてるか』を
生きているうちに伝えておくこと。
それって、死ぬ準備かな?
……ちがうよね。生きてる証だよ」
そのとき、うしろから、声がした。
「——おまえ、そんなことを、考えてたのか」
ふりかえると、そこに、青年の父親が立っていた。さがしに来て、話を聞いていたらしい。
父親
「……すまなかった。
わしは、おまえが『死』の話をしてると思って、こわかったんだ。
まさか、ヤコブの事故のことから、そこまで考えてたなんてな……」
レン
「父さん……」

父親
「……なあ。その『もしもリスト』ってやつ、わしにも、書き方を教えてくれんか
——わしのほうが、先に必要になるんだしな」
レンの顔が、ぱっと明るくなった。
「うん……! いっしょに書こう、父さん。
……あ、でも父さん、字がきたないから、ぼくが代筆する」
父親
「なんだと!」
ふたりの笑い声に、広場のにぎわいが、かさなった。
みらい
「へ〜、なんだか、いいね。
世代をこえて、いっしょに書くって」
みらら
「みらら的にはね〜💕
これが、いちばんの『もしもリスト』の使い方だと思うな。
……家族で、話すきっかけになることッ💕」
村をあとにするとき、みらが、大きく手をふってくれた。
「おー!みらおーッ!
『おひとり島』行くんだろーッ!
この先、海に出たら渡し船があるぞ!
うちのばあちゃんが住んでっから
よろしくな〜!」

つぎの目的地は、ひとりで生きる人たちの島らしい。
「もしも」を語ることは「生きたい」と語ること
若者たちのみら活が、それを教えてくれた。
次回:第27話「おひとり島へ渡る」
9/24(木) PM8:00 公開予定!
海にうかぶ、おひとりさまたちの島。
そこにあったのは、さみしさではなく、自由に生きる知恵だった——。
みーちゃんかみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾



みゃみゃッ?
また落ちてるみゃ……🐾


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前回:第 25 話 「Z世代の終活村」


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