生誕祭の二日目
城下の闘技場は、朝から大にぎわいだった
きょうは祭りいちばんの呼び物——武道大会の日だ
司会
「さあ、始まりました、ミラド武道大会!
国じゅうの強者たちが、王の御前でうでをきそいます!」
観客席で、みらおたちも、わくわくと開会を待っていた。
……そのとき
司会
「エントリー番号七番——
遠くZ世代終活村より参戦!
武道家ーッ み〜らーーーーッ!!」
みらお
「「「いえーーーーっ❤️」」」
闘技場のまんなかで、ポニーテールの武道家が、こぶしをつきあげていた。
みらよう! みらお、来てたのか!
……見てろよ、オレの勇姿ってやつを!
いくぞーッ!おりゃーッ!
みらの試合は、あっとうてきだった。
一回戦、二回戦、三回戦——
大きな戦士も、すばやい剣士も、みらの前では、まるで歯が立たない!





しゅ、しゅごいッ……!
みらちゃん、ちゅよい〜〜〜❤️
気がつけばみらおは、いつの間に作ったのか
『み・ら・ちゃ・ん』と書かれた自作のうちわを、ぶんぶんふりまわして応援していた
みらいが冷たい目で、その様子を見ている





……ちょっと。
そのうちわいつ作ったの!?



え? あ、ゆうべ!
わらとハギレで!
あ、みらいの分もあるよ、はい『み・ら』うちわ



私のは『ちゃん』がついてないんだね?
面倒だったのかな?
わたしへの『ちゃん』もなくなったね?
………
そのとき——観客席のうしろから、聞きおぼえのある鼻歌が、ながれてきた。
「オプションマシマシ〜♪ ボッタクリ〜♪
いつでも どこでも ボッタクる〜♪
恐怖の大王 ボッタさま〜♪」
「って、ワイかッ! 大王ッてワイのことかいなッ! どひゃ~!」



……!? この歌は……!
ぬめり、と人ごみから現れたのは——あの沼の魔物、マシマシボッタだった!
前よりひとまわり大きくなり、はでな商人の服まで着こんでいる



へっへっへ……ワイのこと、おぼえてくれとったか
あれから心を入れかえてなぁ……
って、んなわけあるかーい、商売がえや!
きのうの生前葬、見たやろ?
いま王都では生前葬が大ブームッ!
そこでワイの新商品——
『王様とおんなじ! 超豪華・生前葬パック』!!どやっ!
マシマシボッタは、ずらりと数字のならんだ、あの見おぼえのある紙を観客たちにばらまきはじめた。
マシマシボッタ
「金の祭壇に、白馬の行進、打ち上げ花火つき!
しめて金貨三百枚!いまなら祭り価格で二百九十九枚!はよ契約せんと、売り切れまっせ〜!」



ぜんぜん心を入れかえてない!
と、そのとき。
試合を終えたみらが、ひょい、と観客席にあがってきた。
マシマシボッタは、しめしめと、みらに紙をつきつけ……



おっ、
ちょっとそこのお嬢さん!
べっぴんさんやなあ!
お嬢さんも将来のために
生前葬パックどうでっか??
いまなら金貨二百九十九ま——
みら「——あ?」
みらは紙をじっと見た、そして、にっこり笑った。……目は、笑っていない





おい、おっさん。
この『一式』って中身はなんだ
見積もりの内訳は? 他とくらべたか? クーリングオフは?
……オレはZ世代終活村のまとめ役だぜ?
あわてず、くらべて、たしかめる。
うちの村じゃ、ガキでも知ってることだ!



う、うぐ……
い、いや、それはやなぁ……



だいたいなあ、きのうの王様の生前葬のなにを見てたんだ?
あれはな、金ぴかの祭壇がえらいんじゃない。
『ありがとう』を自分の口で伝えるから
尊(とうと)いんだろうがッ!
それを金もうけのダシにするたぁ
……いい度胸だな、おっさん?
みらの、こぶしがみしり、と鳴った



ひ、ひぃぃ……!
いや、あの、ワイはただ——



おりゃーーーッ!!
ばちこーーーん!!
マシマシボッタは、みらの一撃で、闘技場の空たかくふっとんでいった。
きらーん、と星になって消えていく



おぼえとけよワリャ〜〜〜……
いや、わすれたいわ〜〜〜……
観客席から、その日いちばんの大かっさいがわきおこった。



みらたんッ!ちゅよ〜いッ!
大チュキッ キュンキュンッ❤️



…………ほほう
その日の夕方
一行は、なつかしいわが家に帰った。
とびらをあけると——



ニャーーーッ!
黒いかげが、みらいの胸に、とびこんできた!みーちゃんだ
るすのあいだ、となりのおばさんが世話をしてくれていた



みーちゃん! ただいま〜!
元気にしてた〜?
寂しかったね、ごめんね〜
みーちゃんは、ごろごろとのどを鳴らして
みらいの腕にすりすりした
……ひさしぶりの、家族の時間だった。
はずだった……
——その夜、 不穏な気配が音もなく近づいていた……



ところで、みらお〜?



……ん? どしたの〜? おッ、久々に……❤️



きょう一日、ずーっとデレデレデレデレしてぇ……
そのうちわ、まだ持ってるの? ねぇ?
わたし、いまMPまんたんなのッ❤️
みらい LV 38 魔法使い
HP 97/105
MP 501/501



ま、まって、みらいちゃん、それはアカン
これには深いわけが……
「——ゲキオコプンプーーーンッ!!」
「ギャーーーーーーッ!!」
「誰か助けてーーーッ!💦」
その夜、ミラドの街に勇者のさけびが、こだました
となりの家のおばさんが
「あらあら、仲がいいことッ❤️」と、わらったという。
みーちゃんは、さわぎには知らんぷりで——ひとり、窓辺にすわっていた。
その金色の目は、じっと、北の空を見つめている。……ひくく、ひくく、うなりながら。
——たのしい夜は、ふけていく。けれど北の空の闇は、たしかに、濃くなりはじめていた……


次回:第35話「消えない記憶 〜旅立ちのとき〜」
10/22(木) PM8:00 公開予定!
旅立ちの朝、みらおの姿が、家になかった。
彼が向かった先は、取り壊された祖母の家の跡——
だれにも話したことのない、父の物語が、いま語られる。



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾



みゃーッ🐾
闘技場のすみに落ちてたみゃッ🐾


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前回:第 33 話 「未来を祝う生前葬」


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