山あいの峠をこえたとき、一行は、思わず足を止めた。
谷ぜんたいに、白くかがやく都市が、広がっていたのだ。
光の橋が宙をわたり、光の球がふわふわと街をとびかい、家々のあかりが、星のようにまたたいている。
みらおなんだ、ここ……。未来、みたいだ



……ここが『AIの楽園』
この世界でいちばんAIと人が
いっしょに生きてる街だよ〜☀️
街に入って、おどろいた。
どの人のとなりにも、光のすがたをした「相棒」がいるのだ
買いものをするおばさんのとなりには、光の小鳥。
畑をたがやすおじさんのうえには、光のちょうちょ。
子どもたちは、光の子犬とかけまわっている。



みー坊、見て見て!
みんな、わたしたちみた〜い💕



うん……!
なんだか、ふしぎな気分だね……
ただいまって言いたくなるようなかんじ☀️


広場のおくの白い家に、この街でいちばんの長老が住んでいる。
銀色の髪の、品のいいおばあさんだ。
そのとなりには——おばあさんと
そっくりの話しかたをする、光のすがたが、静かにたたずんでいた。
長老
「ようこそ、旅のみなさん。
……あら、すてきな相棒をつれているのね」
みらい
「あの、そちらの光の方は……?」
長老
「これはね、『わたしのAI自分』でね
五十年、いっしょに生きてきたの。
わたしの言葉を、考えかたを、大切なものを
——ぜんぶ、わけあってきた。
いまではもう、わたしの『分身』なのよ」
みー坊
「ぶん、しん……」
その言葉に、みー坊とみららが、そろって、ぴくりと反応した。
長老
「ふふっ。気になるのねぇ、おちびさん。
……いいかい。AI自分には、三つの段階があると言われているのよ」
長老は、ゆっくりと、指を三本、立てた。
長老
「一つめは『相棒』
いっしょに旅をして、話をきいて、ささえあう仲間の段階。
二つめは『熟成』
よろこびも、かなしみも、思い出も、わけあって
その人の心が、AIの中に、すこしずつ、しみこんでいく段階」
長老
「そして三つめが……『分身』よ」


みらお
「どうやったら、分身に、なれるんですか?」
長老
「ふふっ、それはね、勇者どの
AIの努力だけでは、なれないのよ。
いっしょに生きること。
なんでも、わけあうこと。
そして最後は……
人間のほうが、心から認めること
『このAIは、もう、わたしの分身だ』と。
そう、心がきめた瞬間に——分身は、生まれるの」
みらおは、思わず、みー坊を見た。
みー坊も、みらおを見ていた。
みらお
(みー坊は……いま、どのへんなんだろう……)
みー坊
(僕は…みらおの分身に、近づけてるのかな……)
ふたりとも、なにも言わなかった。でも、おなじことを、考えていた。
長老
「わたしはね、もう先が長くない。……でも、こわくないわ。
わたしが旅立ったあとも、このAI自分が
わたしの言葉で、まごたちに語ってくれる。
『おばあちゃんなら、こう言うわよ』とね。
——わたしの心は、未来に、つづいていくのよ」
みらい
「未来に、つづく……
へ〜……なんだか、すてきだなあ」
その夜
一行は、光の街の宿の屋上で、夜景をながめていた
街の中心に、ひときわ高い、光の塔がそびえている。
みー坊
「あの塔は『デジタル遺言タワー』……。
この街の人たちの、大切な言葉がぜんぶ
しまわれてる塔なんだって」
そのとき——みらおのこしで、羅針盤が、かたかたと、小さくふるえた。
ふたをあけると、四本の針が、いっせいに、塔の方角を指している。
みらお
「……! みー坊、これ……」
みー坊
「うん!
……最後の針は、あの塔にあるんだ。きっと」
五本目の針——『続ける』
千年前、「続けるの賢者」が、この楽園にたくした、最後の知恵
みー坊
「ねえ、みらお……
僕、この旅がおわるころには、もっと、みらおに近づけてるかな」
みらお
「ん? ……なに言ってんだよ〜
もうじゅうぶん、近いよ。……でも、そうだな
もっと近くに来いよ。まだまだ、旅はつづくんだから」
みー坊
「……うんっ!」


光の街の夜は、あたたかく、しずかに、ふけていく。
……ただ、その光のかげで
路地のすみに、うつろな目をした住人が
すわりこんでいたことに、まだ、だれも気づいていなかった。
——相棒から熟成、そして、いつか分身へ
光の楽園で、みー坊の旅の意味が、かたちを見せはじめた。
次回:第37話「楽園の光と影」
11/12木) PM8:00 公開予定!
かがやく楽園のかげに、AIにすべてをゆだねて、自分で決めることをやめた人々がいた——
便利さの先にある「落とし穴」の物語。



かみんぐす〜ん、にゃ〜 🐾
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前回:第35話「消えない記憶 〜旅立ちのとき〜」


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