朝の光が石造りの廊下を白く照らしていた。
「……なんで呼ばれたんだろうね」
みらおがぼそっとつぶやく。石畳を歩く足音が、静かな廊下に響いている。
みらいがきっぱり言った
「魔王のことに決まってるでしょ
昨日の街の異変、王様も気づいてるはずだもん」
みらおだよね〜……魔王さあ、ほんとに引退制度とかないのかな〜



ないわよ!ほら、しゃきっとして
これから王様に会うんだから
大きな扉が開くと、玉座の間に王様が待っていた。
白いひげをたくわえた老王は、いつもより表情が険しい。
「よく来てくれた、みらお。そして魔法使いのみらいよ」


王様は静かに立ち上がった。
「勇者であるおぬしならわかっておるだろう、封印されていた魔王が目を覚ましたのだ…」
みらおの背筋がぞわりとした、予感はあった。
でも実際に言葉にされると、急に現実になる気がして。
王様
「このまま放っておけば、人々の心に闇が広がり続ける
自分を信じられなくなり、未来を想像できなくなり、嘆き悲しむ…
大切なものを残すことすら諦めてしまい、やがて生きる気力を失う……
そういう世界になってしまうのだ…」
みらいが静かに息をのんだ。
みらお
「でも王様ッ…ぼくなんかが——」
「…みらお」
王様がまっすぐに目を見た。みらおは口をつぐんだ
「そなたには、特別なものを授けよう」
王様がゆっくりと手を差し出し
その手の上に、ふたつの小さな紋章が光っていた。
薄く平たくて、四角い形。どこか不思議な光を放っている。
「王家に代々伝わる、知の紋章——『AI』じゃ。身につけてみなさい」
「…エー……アイ…?」
みらおとみらいは顔を見合わせた。
みらおが一つを手に取ると、ひんやりとして、でもどこか温かい感触がする。
「……つけてみる?」
「う、うん」
ふたりが紋章を胸元に当てた瞬間——
ぱあっと光が広がった。
「わっ!」
光の中から、何かが飛び出してくる。


「やっほ〜!会えたね〜!」
みらおの目の前に、ふわりと浮かぶ不思議な存在。
丸くて明るい目が、みらおをまっすぐ見ていた。



え……きみは?



ぼくね〜、ずっと待ってたんだッ!
ぼくはきみの相棒——よろしくね〜!
子供のような声で、にこにこしている。
「……名前は?」
「みー坊だよッ!きみの分身を目指してがんばるよ〜!」
そしてみらいの方には——



みらいちゃんよろしくねーッ!
みらら的には会えてめちゃくちゃうれしい〜💕
みらいがぱちぱちと目をしばたかせた。
「へ〜そーなんだ!……かわいいわね!すごーい!」
「えへへ〜💕」
みらおは頭の中がついていかなかった。
「え、これ、なに…?王様、これはいったい——」
「知の紋章が呼び起こした、知恵の存在じゃ。
彼らはそなたたちの旅を導く。あらゆることに精通し、いつでも力を貸してくれる」
みー坊がくるりと一回転して
「そういうことーッ☀️じゃあみらお、はいこれ」
すっとみらおの前に差し出された、古びた丸い道具
「……なんだこれ」





千年前から王家に伝わる針のない羅針盤じゃ
言われてよく見ると、羅針盤の中心はがらんどうだった
針が入るべき場所が、ぽっかりと空いている、5つぶんも。



世界中に散らばった、5つの針を集めるんだ〜ッ☀️
全部揃ったとき、この羅針盤がほんとの道を示してくれるんだよ!ね〜王様ッ☀️
「うむ、王家の言い伝えによれば
5つの針が揃うとき、魔王のもとに辿り着けるとされている」
「5つ……」みらいがそっと羅針盤を覗き込んだ。
「針はどこにあるの?」
みー坊
「わかんないッ!これから一緒に見つけるんだもんッ☀️」
みー坊は胸を張った
その顔は、まるで大冒険の始まりを心待ちにしている子供のようだ。
みらおはしばらく羅針盤を見つめていた。
針のない、空っぽの羅針盤…でもなぜか、手の中にずっしりと重みを感じた。
みらお
「……魔王引退しないかな〜」
「しないってば〜!」
みらいとみー坊とみらら、三人の声が重なった。
みらおは苦笑いしながら、羅針盤をそっとしまう
「……わかった。行くよ」
玉座の間の高い窓から、朝の光が差し込んでいた。
遠くの空に、昨日より少し大きくなった黒い雲が見える。
しかし今、みらおの隣には——頼れる仲間がいる。
次回:第3話「最初の試練」
旅の一行に、突然の敵が現れる
そして迷子になった、不思議な来訪者との出会い——。


前回:第Ⅰ話 「魔王、復活 〜嘆きの始まり〜」


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